Story 3 熱・光・風をデザインして空調機に頼らない生活を実現
姶良平松の家
かごしま木造住宅コンテスト2017 知事賞受賞
郊外に敷地を確保し、家庭菜園で野菜を作りながら、愛犬と一緒に薪ストーブを楽しむ自然派志向のご夫婦の住まい。これまで、賃貸マンションで暮らしてきたご夫婦は、冬場の結露と、夏、苦手なエアコンに悩まされていた。結露の発生しない窓回りと、空調機に出来るだけ頼らない生活の実現が課題となった。
今回の敷地は、夜間から明け方にかけて、思川の流れにそって吹く北東の卓越風が、内陸の森や水田から涼しい風を運ぶ。夏の調査日、外気の最高気温が35℃を超える猛暑日に、朝の最低気温は、23℃。この夜間から明け方にかけての気温低下を利用した通風、排熱への自然風利用と、日中の徹底した日射遮蔽で、空調機にほとんど頼らない生活を実現している。
ご夫婦は共働きなので、平日、愛犬は家の中でお留守番。この愛犬にとって、空調機を使わないで、心地よい環境が確保出来ることは、ご夫婦にとっても嬉しいことだ。夏、日射遮蔽の為のヨシズを設置したり、ルーバー雨戸の開け閉めも苦にならない。
ゲージの置かれる床タイルは、蓄熱性能が上がることで、夏の最高室温が下がり、冬の最低室温が上がる効果がある。
鹿児島は、暖房より冷房用のエネルギー消費の多い地域である。 夏期の日射遮蔽を重視して、軒の出を充分にとり、さらに日影シュミレーション(Google SketchUp)を実施し、冬の日射取得とのバランスを見ながら、夏、窓面に日射を侵入させない軒の出やヨシズ設置等を徹底して検証した。
東西面は、軒の出では徹底した日射遮蔽は出来ないので、ルーバー雨戸やスダレ、外付シェードで対応、「夏、窓面に日射を当てない。」
十分な軒の出を取ることで、夏、ヨシズがなくても日射は、窓面にあたっていない。さらに、日射遮蔽を徹底するために、ヨシズをフレームに掛け、ルーバー雨戸も閉める。空気中を乱反射して入ってくる天空日射を防ぐためだ。窓面からの熱の侵入は、日射が直接当たる直達日射だけではなく、光と同じように、空気中を乱反射して入ってくる天空日射の熱量も大きい。夏は、直達日射と同量の熱エネルギーを持つ。
ヨシズは、ウッドデッキに日陰を作り、ウッドデッキ床の温度上昇を抑えることで、床からの輻射熱も抑えることが出来る。ルーバー雨戸は、夜間の通風用に考えられた商品であるが、天空日射を、外部で遮蔽する優れたアイテムと言える。日中、ルーバー雨戸を閉めると薄暗くなるが、その薄暗さも含め、熱侵入の理屈を理解すると、涼しく感じて頂いているようだ。
東面は外付のシェードスクリーンを設置。日射遮蔽は、外付けが重要だ。西面の主寝室の窓は、夜間通風の利用も考慮し、ルーバー雨戸で対応している。
さらに、ご夫婦が不在となる平日の日中は、愛犬への気持ちから、部屋内のハニカムサーモスクリーン(断熱スクリーン)まで閉めていらっしゃるそうだ。このような徹底した夏場の日射遮蔽を行うことで、空調機に頼らない生活を実現されている。
2016年7月25~26日の実測データ
外気温が35℃を超える猛暑日、明け方の最低気温は、23℃程度まで下がっている。この土地特有の気候を利用して、夜間から早朝にかけ、ルーバー雨戸から排熱を行い、室温を下げる。7時頃から窓を閉め、徹底した日射遮蔽を行い、室温の上昇を抑える。その使い方で、エアコンを使うことなく、最高室温30℃程度。エアコンの嫌いなご夫婦は、昼過ぎに少し扇風機を回すだけで、心地よく過ごしている。
湿度も外気95%以上の時、木材の調湿性能で、70%前後に抑えられている。