「セルフ施工」による断熱改修の可能性
最近、コスト重視、ローテク、或いはセルフ施工による断熱改修に燃えている、薩摩じねん派 村田 です。
下の写真は、頴娃町に建つゲストハウス「ふたつや」の事務室です。Iターンで引っ越してきた若者たちがシェアオフィスとしても使っているようです。彼らの住んでいるシェアハウスも、大工にも手伝ってもらいながら、セルフ的な進め方で作った改修民家です。
昨日、見学させていただき、宿泊してきました。
ここは、NPO法人頴娃町おこそ会の加藤潤さんが中心になって、私には想像出来ないくらいの低予算で、使われなくなった民家を自分たちの手で改修して作った民泊スペースです。
まず、自分たちの手でここまでのスペースを作り上げている事が立派です。
語弊があるかも知れませんが、「素人の作ったスペース」ですが、床はしっかり断熱され、スリッパなしで歩いても寒さは感じません。暖房は使っています。
最初の印象は、暖房を使えば温熱的なストレスを感じないスペースが出来ていて、これで充分じゃないか。そう感じました。
下の写真は、ゲストハウス 「ふたつや」事務室、シェアオフィスの温熱環境を確認するために撮った赤外線写真です。
この写真から、床が断熱されている事が解ります。残念ながら、壁の断熱とサッシのグレードが足りていないという事も見えてきます。
おこそ会リーダーの加藤さんが、
「こちらの窓側で作業をしているKさんが、この写真を見ると喜ぶだろうな。」Kさんは、日ごろ、この窓際が寒いといっているそうで、まさに、その状態が見えてきます。
この窓際の作業は、本当に寒そうです。部屋の真ん中当たりにたって眺めていても、感じることの出来ない寒さなんですね。
ここで確保したい「空調機を使った時に、暑い・寒いのストレスを感じない温熱環境」にするためには、
1. 足が触れ、一番寒さを感じる「床の断熱」は確保されている OK
2.「隙間風」の影響はないようだ OK
3.「窓と壁面の断熱」のレベルアップがポイントになります。
現在、窓の性能を上げる一般的な方法は、「内窓を設置する」だと思います。しかし、既製の内窓を設置する予算、お金はここにありません。
窓の断熱性能を上げる方法は,内側の壁をはいで、断熱材を入れる。これが一般的な方法でしょう。これも、大掛かりな工事となり、ここで出来る工事ではないようです。
まだ、ここでは書きませんが、
セルフ施工で可能なレベルの工事、
専門の業者が行っても非常に安い施工で、
窓をペアガラスと同等の断熱性能にする。
壁の性能を壁を剥がし、グラスウールを充填した壁と同等の性能にする。
この「窓と壁の断熱改修方法」が見えてきています。
その施工方法を鹿児島大学の二宮先生にも御相談していますが、「実施例が出来たら、是非見せてください。」と言って頂きました。
これから、その施工を進めて行きます。
そもそも今回、低コストの断熱施工を考え始めたのは、一月程前、私の母(82)が事故で、腰と肋骨を骨折。一緒に住む父(91)の状況も含め、車椅子対応の水廻り改修が必要になった事からです。
いつも薩摩じねん派で進めている新築・改修工事の断熱レベルは、出来るだけ空調機に頼らない断熱グレードを計画しています。
もっと言うと、現在の気候変動の状況や1985アクションの目標もあって、現在の家づくりで、このレベルを目指さないことはあり得ない。目指さない家づくりは悪とまで、思っていました。
今回の実家の対応を、いつもの高レベルの改修として行うと、最低でも1000万を超える費用がかかります。このレベルの家をつくることが、当然だと思っていました。
ところが、私の両親に計画内容、その予算を話すと、
「私があと何年生きると思っているんだ。私たちが死んだ後、この家は誰がすむの。1000万? そんなお金の使い方は無い。」
実際は,車椅子で入れるバリアフリーのユニットバスと車椅子対応の洗面台。トイレと水廻りが連続して、車椅子でも利用できるように改修する。隣接する仏間の続き間はそのままに残した、水廻りリビングの部分断熱を考えましたが、そこまでの改修を行うと、1000万でも厳しいかも知れない。そんな状況で、いくら説明してもお金のかかる改修を両親は納得しません。
そのような経緯もあって考え始めた低予算で行う改修計画ですが、このような状況で改修を行わず、寒い家で暮らし続ける高齢者や、Iターンで古民家等で暮らす若者が多くいると思います。
私が、今回考えている、セルフ施工をベースに考えた改修方法は、今、多くの人が望んでいる改修計画ではないかと考えています。
可能であれば、新築も改修も「吹上永吉の古民家」のように、エネルギー収支がセロの家を多く作って行きたいと思っています。
しかし、私の両親のように高齢で、今後の使用年数を考えると大きな予算を掛けたくない、掛けられない人たちもいます。
現在、数多く残っている空き家利用を進める上でも、この改修計画は有効だと考えます。
まず、予算を第一に考えます。
予算に応じた断熱改修を行い、どのレベルの改修でも、断熱性能がアップした事を実感できる改修を行います。
暖房、冷房の空調機を使う事を前提に計画を進めます。その空調機で、暑い、寒いという熱環境のストレスを感じない温熱空間を実現します。
完成した温熱環境の状況を赤外線写真等でお示しします。
この計画を進めるにあたって、期間は短いですが、いろんな人に意見を聞きました。
現在、行われている多くのリフォームは、お風呂トイレなどの設備を入れ替え、壁紙を張替える。お化粧リフォームです。予算に多少余裕があれば、断熱効果があるからと、内窓を付ける。そんな工事が多いようです。
しかし、この程度の考え方で内窓を付けても、暖かくなったと感じることの出来ないリフォームが、たくさんあります。理屈が解っていれば、暖かさを感じないという理由は、直ぐ理解できます。
余分なお金を払って、暖かさを感じる事のできないリフォームを行った住まい手は、「断熱なんてやっても無駄。暖かくならないよ。」と知り合いに言います。
残念でなりません。新築で行う断熱と、改修工事で行う断熱は、考え方、進め方が違うんです。しかし、この理屈を理解していないリフォームの施工業者が多いんです。
現在、実際に出来上がった空間が無いので、私の言っている話も、説得力があまり無いですよね。
先に書いたように、まず、私の実家でそのセルフ施工を前提に考えた施工方法で、工事を進めます。
実際、私は会社で働いているので、セルフ施工を行うことはできません。施工業者に頼む事になりますが、セルフでも可能な施工を職人にやってもらいます。セルフで出来る施工内容は、施工単価も安くできますし、セルフでやるより施工日数も少なくてすみます。
頴娃町の「ふたつや」、その他の改修民家の断熱改修は、これまでと同じ様に、きっと加藤さんを中心としたスタッフのセルフで実行されると思います。
数ヶ月後の結果をお楽しみに。赤外線写真で状況をお示しします。
数ヶ月すると春ですね。暖かくなります。実際の効果を示せる写真は、次の冬が来ないと撮影できないかも知れません。次の冬も、写真を掲載します。
別の話しですが、来年の冬の前に夏がきます。
夏は、別の問題がおこるはずです。屋根の瓦からの輻射熱で、冷房が効かないという話が出てくるでしょう。その時のセルフ施工の対応策は考えてあります。状況を確認しながら、おこそ会リーダーの加藤さんといっしょに検討、改善状況を確認しながら、セルフ改修を楽しみたいと思います。