私の実家「セルフ施工」古民家リノベ現況 

今年の1月下旬、私の母が腰と肋骨を折る骨折をして車椅子生活になるかも知れないということで、始めた実家の改修工事でした。 5/17、母も無事退院。なんとか、杖を使った歩行が出来るようになりました。実家で父と二人、片づけを進めながら生活を始めています。

私も育った家です。結婚して60年以上、一度も引っ越しをせず暮らしてきた家ですから、その片付けは大変な作業です。まだまだ、ゴミが溢れていますが、どうにか生活は出来る状態になっています。

このblogでも、何度も工事内容については書いていますが、断熱改修を含めたバリアフリー工事は、これまでに何度も提案していたんですが、90を超えている父が、1000万を超えるような通常薩摩じねん派が進めている工事は、ここを利用する年数を考えると理解できないと、改修工事を進めることを拒否してきた経緯もありました。

コストを徹底して抑えながら、確実に断熱性能を確保し、バリアフリー改修を進める。これが、今回のテーマでした。

高齢の二人が、温熱環境でストレスを感じない事を考え、施工範囲を限定しました。リビング、キッチン、寝室、洗面脱衣、トイレが施工範囲です。

日常使わない仏壇、床の間のある続き間、田の字平面の半分を断熱区画して今回の工事範囲から外しています。

続き間とリビングの区画、ふすまのあった部分は、しっくい壁の垂れに断熱ボードを付加して、開口部は断熱仕様の「内窓」としました。

天井は、通常のGW100mm。床は、タタミ厚で処理できる、断熱ボード25mm+針葉樹合板15+スギ15です。タタミのない縁側部分は、現場発泡ウレタンとしました。

ここで、目指している断熱性能は、通常のじねん派の仕様より低いレベルです。暑い時、寒い時には、空調機を使います。改修前は、無断熱でしたから、出来上がった空間は、現在でも以前とは全く違うと実感できます。

断熱サッシへの取り換え、あるいは内窓の設置や、外壁の断熱工事はコストのかかる工事です。

外部サッシの断熱改修は、中空ポリカを張り付けることで、ペアガラス同等の断熱性能を目指しています。気密確保のために、建具調整と、気密材の付加も行います。

ポリカ内部の空気が上部へ抜けないよう、ポリカ上部にコーキングを行いました。下部は、ガラス面、アルミ部分の結露水が溜まって、浸透圧で中空層内部へ侵入することを想定して今回は、コーキングは行っていません。様子、性能の状況を見て、手を加えていこうと思います。

また、実際に施工してみて、日射の当たる部分では、ポリカの熱膨張が大きくて、幅の余裕なしで設置すると、熱膨張で両サイドから押す形になって、ポリカが剥がれてきます。

どの程度の余裕が必要か、伸び縮みに対応したディテール検討が必要です。

実際の性能等は、夏・冬、気温差、表面温度差等を測定して、逆算しようと考えています。

外壁を剥がしての断熱材の設置もコストのかかる工事です。壁は撤去せず、壁内側に断熱ボードを付加する仕様としています。

このような施工で、通常イメージする改修工事の1/2以下の施工費で工事を収めることが出来ました。

何度も書きますが、通常の薩摩じねん派で薦めている断熱仕様と比べると、低い性能です。

ただ、私の父と同じような考え方で断熱改修を行っていない高齢者、あるいは、高額な工事費を準備できなくて、断熱改修を行っていない高齢者が、多くいるのではと思います。

また、鹿児島の田舎へIターンUターンで入植している若い人達の現状は、古い民家に寒い思いをして住んでいる方が多くいます。

そんな方々の実情を考えた時、このグレードの断熱改修は、十分価値のあるレベル、コストパフォーマンスのある施工法だと思います。

今回、ここで進めた施工法は、基本的にやる気になればセルフ、自力でも施工できる施工法です。もちろん、プロが行っても良い施工法で、しっかりとした技術を持って対応すれば、確実な性能がでる改修工事がローコストで可能です。

家づくり、リフォーム工事を生業にしている薩摩じねん派が、このセルフ施工も含めた断熱改修をご紹介するのは、なぜでしょう。

会社の経営理念に基づき、現在、全社を挙げて取り組んでいる「SDGs」の考え方があるからです。

SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)が掲げる

「地球上の誰一人として取り残さない」という誓い。

最初の1,2,3に掲げられる、もっとも根本的なコンセプトです。

世界の貧困層を見捨てない、というだけの意味を示すものではなく、世界の、社会の、あらゆる層が問題の解決に参加し、地球の未来に貢献することを求めるものでもあります。

アフターコロナ、ウィズコロナの時代。地球温暖化への対応も含め、これから益々たいせつになるコンセプトだと思います。

これまで、薩摩じねん派が提案してきた家づくりは、基本的な性能を満たした住宅であって、贅沢なものではない。高価なものではない。と考えてきました。

今でもそう考えていますが、現実の社会に目を向けると、私たちが基本的な性能と考えている住宅に住んでいない、住もうと思っても住めない人がたくさんいます。そのような人達の方が多いと言っても良いでしょう。

その現実を見ないで、自分が基本と考える、実際は平均的な人達には、取得できない家のみを作り続ける事は、「会社の経営理念」「SDGs」の根本理念にそぐわない。そう考えるに至りました。

もちろん、自分が理想と考える家づくりも進めます。それだけでなく、現実の社会の実情もしっかりと把握して、「誰一人として取り残さない」対応、行動を実践していこうと思います。

「セルフ施工」による断熱改修の可能性

吹上永吉 「セルフで進める古民家改修」を楽しむ 1

薩摩じねん派 村田 でした。