「まずネガワットだ。」バークレー白熱教室 リチャードムラー教授

真夏日の週末、「空調機を使わない家」完成見学会を行いました。

今回の住宅には、空調機が設置してあります。
空調機を使わない生活を強いるものではありません。

そのコンセプトは
空調機に頼らない生活を楽しむ。

廻りの環境を利用して、丁寧に設えれば、
空調機に頼らなくて済む季節、時間は、まだまだあります。

もっと言えば、その工夫した暮らしは、
空間を閉じて、機械に頼る生活より、
廻りの環境との連続性もあり豊かで楽しいものです。

この生活は、地球温暖化、気候変動、エネルギー問題も意識していますが、
その先に、無理することなく原子力に頼らない生活を実現したい。

本気で真実味を感じながら生活しています。

数年前のNHKBSの番組で、その考え方、アプローチを示す良い番組がありました。
旧ブログでも紹介しましたが、新しくなったこのブログでも、紹介させて下さい。
この番組はオンデマンドで見れると思います。お勧めです。
「バークレー白熱教室」 リチャード ムラー教授(物理学)の第3回、地球温暖化について話す番組で、講義の枕的な話として語られた、学生とのやり取りが非常に興味深かったんです。
「今日は、地球温暖化の話をするんだが、その前に一つ話したいことがある。みんなで、考えて欲しい。」とはじまります。
 
20年後、君がニューヨーク州の州知事になっていて、「今日、電力会社の人間が来ます。数年後、火力発電所が壊れて動かなくなるので、原子力発電所を作りたい。と、話に来ます。何か、考えがあったら、今日中に結論を出してください。」そう言われたら、君ならどう答える。
 
例えば、「アメリカの石炭の埋蔵量は多いのだから、効率の良い石炭火力発電所を立てれば良い。」と答える?あるいは、「安全性の高い最新の原子力発電所を建てなさい。」と答える?
 
意見のある人? 
4人の学生が答えます。
1. 天気の良い西海岸に太陽光発電所を建て、効率の良い送電網を整備して、ニューヨークで使う。
2. シェールガスを使ったガス発電を薦める。
3. ニューヨーク北部は風が強いので、その地域に風力発電所をつくる。
4. 効率の良いコンバインドガス発電システムを薦める。
 
「まだ、私の考える最善の対応策が出ていない。他に?」
一人の学生が答えます。「消費エネルギーを抑えることを考えます。」
 
そう、建て替えるのではなく、私ならエネルギー削減の5ヵ年計画を立てるよう指示する。
 
ただ、努力(我慢)するんじゃない。いままで通り、クーラーを使いながら電力を抑える。
効率の良いエアコンに変える。建物の断熱性能を上げる。冷蔵庫を省エネタイプに変える。
すでに、この方法で、大きな成果を上げている州もある。
この対応は大きな可能性がある。まず、「ネガワット」だ。
君たちの提案も良かったが、まず、「ネガワット」だ。   それでは、講義に入ろう・・・
 
ここでも紹介されますが、住宅等で、断熱性能を上げ、パッシブデザインをうまく進めれば、外部からのエネルギー供給が必要ないゼロエネ環境、オフグリッドが可能な時代です。「これから、地球温暖化の話やその対応策の話をしていくが、まず、努力すべきコト。やるべきコトは、ネガワット、省エネである。これが容易にできる対策で最も効果がある」と強調します。
 
まさに、今、良識的なハウスビルダーが真剣に取り組む、パッシブデザインの有効性、意味を説明しています。
 
この番組は、2013年の放送ですが、ムラー博士は地球温暖化の原因は、化石燃料から発生するCO2であることも、明確に説明します。これまでの、気温データの問題点やその他の要因との因果関係の検証等を厳密に洗い直し、これまで議論のあった、その原因物質がCO2なのか?そもそも、地球温暖化は起こっているのか?を整理し説明します。結論として、ここ100年の地球の気温変化の原因は、化石燃料から発生性するCO2と火山の噴火による大気中の火山灰の変化だと明確に示してくれます。
 
これが、この番組のテーマでしたが、
私には、ネガワットの話が、印象に残る番組でした。
じねん派の住まい造りの基本的なコンセプトです。
 
下の図は、「自立循環型住宅への設計ガイドライン 蒸暑地版」に紹介されている、鹿児島の一戸建て木造住宅の年間1次エネルギー消費量68.6GJの利用割合を示すグラフです。
イメージ 2
断熱性能を上げ、効率の良い空調機を設置して「暖冷房」を下げる。高効率の給湯器や太陽熱温水器を使えば、「給湯」も下がります。冷蔵庫、テレビを最近の消費電力の低い製品への買い替えも大きな効果が上がるコトが理解できます。
 
最近の断熱技術やサッシ類の性能の向上、さらに空調機や給湯器の性能の改善はすごいです。
これまで、3%、7%削減という運動がありましたが、ほとんど成果が上がらなかったじゃないか。そう言う人もいるでしょう。
 
しかし、最近の省エネ技術の変化で、年間1次エネルギー消費量をこれまでの1/2程度まで下げることが、我慢せずに出来る時代です。
どこまで、本気で取り組むかです。鹿児島であっても、断熱性能を上げ、夏の遮熱、通風、排熱の計画を丁寧に計画すれば、空調機に頼らない生活が可能です。実際、空調機を利用しない生活を実践できている家が何軒もあります。
冬は、ほとんど暖房の必要ない家になりますが、自分で薪を調達して、薪ストーブを使えば、暖冷房に使う一次エネルギー消費は、ゼロというコトになります。薪の調達が難しいという方は、最近の効率の良いエアコンに変える。断熱性能を確保している家は、冷房にかかるエネルギーも削減できます。給湯も太陽熱パネルを使った給湯システムを使えば、大幅な削減が可能です。
 
このような対応を行えば、現在の平均的消費エネルギーの1/2程度の削減は、本当に難しくありません。
そこまでの対応をしてから、太陽光パネルを屋根に載せれば、ゼロエネルギー、プラスエネルギーの住宅が容易に実現します。
 
こんな家に住む人たちは、どんな人でしょう。神経質で、ストイックでつまらない生活をしているんじゃない。そのように思う方もいるでしょうね。まったく逆です。
 
これは、自信を持って言えるのですが、このような生活を求める人は、家族と過ごす時間を大切に考え、家で過ごすことを楽しんでいます。庭で野菜をつくったり、薪をつくったり。
自然志向の家づくりを好むご家族は、「家族と家で過ごす時間」「家あそび」を大切にしています。
あなたもこのような家づくりを考えてみませんか。