シロアリどもが夢の跡

昨日のシロアリ話の続きです。これは、新築工事のために解体した古屋から出てきた巨大なシロアリの巣です。正確に言うと、シロアリの巣跡です。シロアリは一匹もいませんでした。その経緯は、後半でコメントします。

昨日紹介したウッドデッキ脇から侵入したシロアリの対応を説明します。じねんもくは、一般的な床下全体に薬剤散布を行うバリア工法は採用しません。また、これまで約20年間、地元材を使った木造住宅を作っていますが、シロアリの侵入を確認したのは、2006年、この1件のみです。

この現場は、初期段階の発見で、食害もそれほど進んでいませんでした。蟻道を採り込むようにシロアリの好むエサを内部に入れたベイトボックスを設置します。シロアリがベイトボックスに集まった時点で、ベイト(エサ)を、薬を含浸させたベイトに交換しました。

シロアリは脱皮しながら成長します。この薬は、その脱皮を阻害する薬です。シロアリは、この薬を摂取してもすぐに死ぬことはありません。2週間程ベイトを食べ続け、次第に体が変色し、動かなくなって死にます。その間、このベイトは巣まで運ばれ続け、コロニーにいるすべてのシロアリが、ベイト剤を食べて死滅します。約2か月程度で動くシロアリがいなくなります。

ベイト工法は、床下全体に薬剤を散布するバリア工法に比べ、ポイントで薬剤を設置するので安全です。さらに、薬剤のバリアで家を守る考え方でなく、コロニー全体を死滅させる工法なので、効率的で徹底した対応です。

最初にアップしたシロアリの巣。これは、ベイト工法で死滅した巣跡です。実は、解体した住宅の隣の住宅が、建物の周辺にベイト剤のステーションを配置するベイト工法でシロアリ対応をしていました。これだけ近距離にベイト剤が置いてあれば、ここに住んでいたシロアリは、脱皮阻害剤を含浸したベイトを摂取したでしょう。コロニー全体のシロアリが食べて、死滅したと考えられます。シロアリにアタックされやすい状況の家でしたが、生きたシロアリはまったくいませんでした。

解体前の古屋は、多少シロアリの知識を持った人であれば、すぐにその食害の状況、危険性を理解できる家でした。地面と連絡する大きな蟻道もすぐに発見できましたし、屋根もところどころ雨漏りをしているようで、屋根の形状も歪んでいました。さらに、古いタイル張りの浴室もあります。シロアリは、地中から水を運びますが、この家では、家の中に水が豊富にある状態だったわけです。ここまでの状況になると、食害も加速度的に進みます。シロアリの天国だったでしょう。隣地の住宅がベイト工法を取ったことで、この家のシロアリが全滅したわけですが、隣家のベイト剤がなかったら、シロアリの食害が家全体に進み、構造的に危険な状態になったと思います。

蟻道が無くても、家の中に水があれば、その水でシロアリは繁殖できます。たとえば、床下配管からの漏水で床下に水が溜まっている場合。屋根や外壁等の不具合による雨水の侵入。この漏水が切っ掛けになって、飛来したシロアリが繁殖している事例もあるようです。外部からの目視だけでなく、床下に入って、年一回実際に目視で検査確認することは、この水の確認も含め、大切な作業です。その確認作業のために、じねんもくの家には、床下全体に照明が設置してあります。